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漫画、[三田紀房] エンゼルバンク 第13巻。
不動産業の小宮山と井野、海老沢の会話。

・小宮山:「若い独身女性のマンション購入ってトレンドですよ」

・井野 :「トレンドって・・・私・・・別に・・・」

・小宮山:「一生独身だなんて思ってないですよ」
     「単身用の物件がいっぱいあるんですよ。まずはそれを買っておいて・・・結婚したら売ればいいんですよ」
     「井野さん、投資しないともったいないですよ」

・井野 :「投資?」

・小宮山:「購入すれば同じ金額で賃貸よりもずっといいところに住めるんですよ」
     「老後の安心を買うって考えるとすごく安い買い物です。値上がりした時に売ればもっといいところに住むことだって可能なんですよ」

・井野 :「でも私には買えませんよ。頭金だってないし・・・」

・小宮山:「ローンがあるから心配ないですって」
     「30年ローンを組むなら払い終わりが62歳の今がギリギリ。所得が増えれば多めに払って期間を短縮すればいいんです」
     「今は買い時なんです。税も優遇されてますし、底値だからこの後は値上がりします」

・井野 :「確かにそうかもしれないですね・・・」

・海老沢:「失礼、小宮山さんとどんな話を・・・」

・井野 :「はい、それが・・・」

・小宮山:「すいません、僕が脱線しちゃって・・・井野さんにマンション購入を勧めてました」

・海老沢:「マンション」

・井野 :「ええ・・・投資にもなるから買った方がいいって・・・」

・海老沢:「投資・・・」

・小宮山:「つい・・・営業しちゃって・・・」

・海老沢:「そういえば、妹さんが結婚を機にマンション買うんだよね」

・井野 :「はい・・・」

・小宮山:「ぜひぜひ紹介して下さい。とっておきを案内します!」

・海老沢:「じゃあ小宮山さん・・・君はマンション買って持ってるの?」

・小宮山:「え・・・それはまだ・・・」

・井野 :「えっ・・・」

・海老沢:「おかしいな、投資にもなるんでしょ。なのに自分じゃマンション買ってないのおかしくない?」

・井野 :「え?何?どうして?」

・海老沢:「マンションを買わない理由、自分からじゃ言いにくいでしょ。僕から言ってあげるよ」
     「今の時代、若いうちにマンションや一戸建ての不動産を買うと、将来損をする可能性が高くお金持ちにはなれないからだ!」

・井野 :「え・・・若いうちに不動産を買うと、お金持ちになれない?」

・海老沢:「別に小宮山さんを責めてないよ。お金持ちになりたいなら買ってなくて当然だよ」

・井野 :「ちょっと待って下さい。私にはマンションは将来への投資って言ってたのにひどくないですか?」

・海老沢:「確かに投資と言って説得するのはずるいよね」

・小宮山:「つい調子に乗ってしまって。反省します」

・井野 :「どういうことです?二人とも・・・」

・海老沢:「あのね・・・もはや不動産は投資にはならないんだよ」

・井野 :「投資にならない?」

・海老沢:「井野さん、投資と聞いてどんなイメージを持つ?」

・井野 :「と・・・投資。そ・・・それは・・・」

・海老沢:「小宮山さんはどうかな?それで君がどれくらい本気で金持ちになりたいかがわかる」

・小宮山:「はい・・・投資とは雪だま作り、元金となる雪だまを転がして利息をつけていって大きくすることです」

・井野 :「きれいそうなイメージを言って・・・結局はマネーゲームじゃないですか・・・」

・海老沢:「違うよ、お金について真剣に考えてるだけだよ。サラリーマンが給料以上にお金持ちになるには・・・投資をするしか方法はない。その努力をマネーゲームと簡単に否定しちゃダメだ。」
     「小宮山さんはどういう資産形成をするつもりだった?」

・小宮山:「自宅は賃貸にして・・・できるだけ貯金を増やします。その資金を株と為替で年の利回り3~5%で運用するつもりでした」
     「家を買うなら老後にローンを組まずに買います」

・井野 :「ローンを組まずに・・・」

・海老沢:「計画としては申し分ない。『借金して自宅となる不動産は買わない』昔とは金持ちになるための鉄則が変わったんだ」

・井野 :「ちょっとひどすぎませんか・・・小宮山さん・・・」

・小宮山:「すいません・・・」

・海老沢:「不動産屋の人はみんな同じようなセールストークをするって・・・」

・井野 :「そんな・・・」

・海老沢:「不動産屋のセールストークはこんな感じだ。家賃と違って家が残ります。同じ額を払うなら家賃よりもローンの方がお得ですよ。金利が安い今のうちに長期ローンを組んだ方がいいですよと・・・」
     「きっと妹さんと婚約者の彼も・・・そんな説明をされてマンションを買う気になったんだろうね

・井野 :「おそらくそうだと思います」

・海老沢:「じゃあさ・・・井野さんは株の信用取引って知ってる?」

・井野 :「信用取引?なんですかそれ?」

・海老沢:「取引する額の30%を保証金にして実際に持っている以上の金額で株の売買をすることだよ。例えば手持ちの現金が200万しかなくても400万を借金して株の取引ができる」
     「井野さんならそこまでして株の取引をする?」

・井野 :「嫌ですよ。借金をしてまで株をするなんて恐ろしい」

・海老沢:「だよね。ローンを組んで家を買うのだって同じ仕組み。500万円を頭金にして3000万円の物件を買ったりするけど、頭金で総額の30%も用意しなくていいのだから株の信用取引よりもリスクはずっと大きい」

・井野 :「だったらどうして家を買うんですか?みんな得すると思うから家を買うんですよね?」

・海老沢:「昔は得をしたからだよ」

・井野 :「え・・・」

・海老沢:「購入価格とローンの金利を合わせたよりも・・・土地が値上がりをした場合だけ得をする。事実、日本ではバブル崩壊前まで土地の値段は40年近く上がり続けた。土地は株なんかよりもずっと確実な投資対象だった。確実に値上がりするなら借金を背負っても投資した方が儲かる。でもバブル崩壊とともにマイホーム神話も崩壊して株よりも危険な商品になった」
     「そんな時代になっているのに30年ローンを組むとどうなるか?昔と違って30年後なんて予測不可能。この国がどうなっているかわからないのだから背負うリスクは小さくしないと」
     「小宮山さんはそのことをよくわかってる。だから借金せずに不動産以外に投資をするのさ」

・小宮山:「不動産屋の僕がこんなことを言うのもなんですが・・・戦前の日本は賃貸で暮らす人が多かったんです。マイホームが国民共通の夢になったのは戦後になってから。お金が大きく動く産業を成長させようと国が後押しをして国民みんなが不動産投資に参加したんです。土地が値上がりし続けるなんてネズミ講と同じで必ず破綻が来るのにみんなローンを組んだんです」

・海老沢:「自営業者よりもサラリーマンの方が銀行のローンが組みやすい。だからサラリーマンがあこがれの職業になった。サラリーマンの増加とマイホーム神話にはそんな関係もあるんだよ」

・井野 :「そうだったなんて全然知らなかった」