乳癌チェックを表現したイラスト

望ましい体重を維持することは、乳癌と診断された女性の生活の中で、かなり大切なことと言えます。
数十年来の研究では、乳癌と診断された時に過体重や肥満だった人ほど経過が悪いことが示されています。

また、これらの研究では過体重や肥満が、リンパ節転移、対側乳癌、再発、合併症、乳癌死亡、乳癌以外の原因による死亡、リンパ浮腫の発生などと関係することが示されています。
このように、肥満は乳癌患者の経過に悪い影響をおよぼすことがはっきりと分かった要因であることや、乳癌と診断された女性の多くが診断時に過体重であることから、乳癌患者が適切に体重を管理することはとても大切です。
また、乳癌の診断後に体重が増える患者が多いという事実も、問題を深刻にしています。

米国の看護師健康研究で喫煙していない乳癌患者を分析したところ、乳癌診断後のBMIの増加が0.5未満であった患者と比べて、BMIが0.5~2まで増加した患者の乳癌再発率は40%高く、2を超えて増加した患者では53%も高いことが分かりました。
この研究では、乳癌診断後に体重が減った患者では、有意な経過の悪化はありませんでした。
半面、体重増加と乳癌の経過との間に、明らかな関連性はないと指摘する最近の研究もあります。

意図的ではない体重減少は、がん再発の兆候かも知れないので、注意して様子をみる必要があります。
意図的な減量と、病気による体重減少や原因不明の体重減少とは、大きな違いがあります。
過体重や肥満は、乳癌の経過だけでなく、健康全体や生活の質にもマイナスの影響を与えるという研究が多数報告されていることから、過体重の早期乳癌患者に対する今日の標準的治療の中で、体重管理は優先順位が高く位置づけられています。

過去10年来の研究や最近の研究でも、補助科学療法やホルモン療法を受けた乳癌患者の体重増加は、脂肪量の増加によるものであり、除脂肪体重は変化がないか減少することが報告されています。
このように、身体組成の中で脂肪の割合が多くなるという悪影響を考えると、乳癌治療中の体重管理の目的は、治療中に増えた体重を減らすことだけでなく、筋肉量を維持し増やすことにもあると言えます。
治療中や治療後に筋力トレーニングを行うことは、除脂肪体重を維持し、余計な体脂肪の増加を防ぐ助けになるでしょう。


また、たとえ標準体重を達成できなくても、6~12ヶ月かけて体重を5~10%減量すれば、慢性疾患に関係する血中脂質や空腹時インスリン量などを減らすには十分であることが、健康な一般集団ではっきりと分かっています。
さらに、最近の論文のまとめによると、減量によって、乳癌と関係する生体指標が好転することも示されています。

乳癌生存者の運動に関する研究は数多くあり、複数のまとめの論文が運動の役割に着目しています。
14件のランダム化比較試験に参加した717人の乳癌生存者を対象としたメタ分析によると、運動することによって、生活の質、体の機能、最大酸素消費量、倦怠感が改善することが、統計学的にも明らかであることが分かりました。

また、1万2000人以上の乳癌生存者を追跡しあ6件の前向きコホート研究に関するもう1つのメタ分析では、診断後の運動により、乳癌の再発率、乳癌死亡率、総死亡率がそれぞれ24%、34%、41%低下することが示されました。

センチネルリンパ節切除の実施は増えてきているものの、リンパ浮腫は、依然として乳癌生存者で懸念されることです。
けれども、リンパ浮腫が生じるリスクが高い生存者であっても、有酸素運動や筋力トレーニングは安全で、リンパ浮腫の発症を減らし、すでにリンパ浮腫を発症している生存者でも、その症状や重症度の改善が期待できることが分かってきています。