遺言書を書いているイラスト

遺言書には自分の意思を自由に書くことができますが、遺言として残したからといって、すべてが有効かというと、それはまた別です。
遺言が法的に効力を持つ事柄は限られています。
その法定遺言事項にあたらない遺言は効力がないのです。
法定遺言事項には、下記の3つがあります。

①法定相続分と異なる相続分の指定

遺言によって、相続分を指定することができます。
例えば、長女に2分の1、残りを他の兄弟に分けて相続させる、など、法定相続分と異なる相続分を指定できます。

②遺産の分割方法の指定

遺言によって、遺産の分割方法を定めることができます。
遺言がない場合、誰がどの遺産を取得するのかなどを相続人の間で協議しなければなりません。
例えば、遺言書に土地家屋を長男に、預貯金を次男に相続させるなど、どの遺産を誰に相続させるか記載されていれば、このような話し合いが不要になります。

遺産分割方法の指定として、ある財産を特定の相続人に取得させる場合、「○○の土地は誰々に相続させる」と書きます。
この「相続させる遺言は、下記の遺贈とは区別されます。

③遺贈

遺言によって財産を他人に与えることを「遺贈」といいます。
遺贈は法定相続人に対しても全くの他人に対しても行うことができます。
特定の財産を遺贈することもできれば、「遺産の3分の1を誰々に遺贈する」というように包括的な割合を示して遺贈することもできます。

包括遺贈の場合、遺贈を受ける者は相続人と同様に権利義務を引き継ぐため、被相続人に債務があれば、それまで引き継ぐことになります。

相続させる、と遺贈する、の違い

遺言によって法定相続人に特定の財産を取得させる場合は、誰々に「遺贈する」ではなく「相続させる」と記載したほうがいいでしょう。
「遺贈する」という表現は文字どおり「遺贈」を、「相続させる」という表現は「遺産の分割方法の指定」を意味し、「相続させる」という遺言の方が、相続登記の手続きが簡便になるなどのメリットがあるからです。
ただし、法定相続人以外の者に特定の財産を取得させる場合には、遺贈の方法によるほかありません。

その他の遺言はどこまで有効なのか

上記の3つのこと以外にも、遺言で実現できることは数多くあります。
それを下記に記載します。

・遺産分割の禁止
相続開始のときから5年を超えない期間、遺産の分割を禁止することができます。

・遺留分減殺方法の指定
遺贈があって、ある相続人の遺留分が侵害されている場合、その相続人は遺贈を受ける者に対して遺留分にあたる部分を渡すように請求することができます。
これを「遺留分減殺請求」といいます。
そして、複数の遺贈がある場合、遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求権を行使する遺贈を選ぶことはできず、全ての遺贈に対し、遺贈された財産の価値の比率に応じて遺留分の減殺請求をしなければなりません。
しかし、遺言者がこれと異なる減殺方法を遺言に記載しておけば、その記載に従って減殺されることになります。

・推定相続人の廃除
相続排除は、相続人の資格を喪失させるもので、被相続人が家庭裁判所に申請するかあるいは遺言書に記すことで可能です。

・認知
婚外子を認知することができます。

・祭祀承継者の指定
位牌や仏壇、仏具、墓地、墓石などの祭祀財産は、通常の財産と区別されて遺産分割協議の対象とはなら、先祖の祭祀を主宰すべき者が承継します。
被相続人は生前に祭祀承継者を指定しておくことができます。
遺言で指定してもいいし、それ以外の方法で指定することもできます。

・保険金受取人の変更
生命保険の保険金の受取人を、遺言で変更することができます。

・遺言執行者の指定
遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定することができます。
遺言執行者とは、遺言を執行する権限を持っている人のことです。

・特別受益の持ち戻し免除
ある相続人が、被相続人から生計の基礎となるような生前の贈与を受けたり、遺贈を受けたりする場合、これを特別受益として被相続人が相続の開始のときに持っていた財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなして遺産が分配されます。
これを特別受益の持ち戻しといいます。
しかし、被相続人が持ち戻しを免除する意思表示をした場合には、遺留分を侵害しない範囲内で効力があります。
免除の意思表示は遺言によらずにすることもできますが、遺言書に記載することもできます。